イギリス人の人柄の良さを実感 田中秀太郎さん |
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イギリス | |
ちょうど3年前、私はインターンシップ制度を通じて1年間イギリスで日本語および日本文化を紹介する機会を与えられた。大学時代に数回、短期で海外への語学留学には参加していたものの、長期滞在をしたいと思っていた私にとって、夢がかなった瞬間でもあった。派遣されたのは、イングランド第3の都市、マンチェスター。「ベッカム様」がプレーするプレミアリーグのチーム、マンチェスター・ユナイテッドでおなじみの町だ。私は日本の高校に相当するsixthform collegeという公立学校で、日本語の初級コースと折り紙や書道などの日本文化を担当した。イギリス国内で、origamiやkarateはすでに日本文化として定着したものの、ロンドンを中心とする南部以外の地域では、日本についてあまり知られていないのは驚きだった。まさに「ゼロからのスタート」といった感じで日本語教師としての生活が始まった。授業初日、とても大人っぽく見えるイギリスの高校生を相手に、おどおどしながら台本どおりの授業をしていた光景が懐かしく思い出される。一見アメリカ人のような気さくな人間性を思い描きたくなるが、イギリスも日本と同じ島国。人見知りをし、やや保守的なイギリス人の国民性に親近感を覚え、私はすぐに彼らと打ち解けることができた。いったんお互いを理解し合うようになると、彼らは日本について積極的に知ろうとする意欲を示し、同時にイギリスについても親切に教えてくれた。この1年を通して「イギリス人は気取っていて冷たい」という先入観は消え去り、偏見や固定観念が無意味であることがよく分かった。「百聞は一見にしかず」である。日本を紹介するのが主な目的であったが、もちろん自分自身の勉強も忘れなかった。滞在中、私は英語の上達とイギリス文化の吸収を心がけた。常にポケットサイズのメモ帳を持ち歩き、会話の中で耳にした面白い表現があればすぐにメモした。文化についても同様で、日本と異なる習慣に触れたとき、そのつど書きとめた。これらは帰国してからの最高のお土産になるのである。現在、私は佐賀県で高校教師をしているが、インターンシップを通して得た経験は日々の授業に大いに役立っている。退屈な英語の授業の要所要所で私の体験話をすると、生徒は目を輝かせて話を聞く。外国へ行くことがすべてではないが、実際に自分の目で見たことは確かな自信につながり、視野が広がり将来の目標にまで発展することもある。また、異文化を理解する一方で日本についても再発見できるメリットがある。日本を出て初めて、郷土や伝統文化を重んじる大切さに気付くのかもしれない。私は、今の環境に感謝するとともに、これからもできるだけ多くのことに挑戦しようと考えている。 |