スウェーデンで得た本当の財産 今別府 美保さん |
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スウェーデン | |
1年間のスウェーデンでのインターンシップを終えて早いものでもう1年が経とうとしている。研修期間と同じ時間が帰国して過ぎて、研修を終えたのがまだついこの間という気がしているが、それだけ研修の1年が色濃い日々だったからかもしれない。 さてその研修についての話といえば、例えばどういうことが起こったか、またそれに自分がどう対応したのかなどのことが今後研修国に赴くであろう方々に対して一番役立つことかもしれないが、それはこれまでに多くの方々が書かれてきたことでもあるし、研修地・研修者によっても問題は大きく異なることなのでそれはここでは触れないことにする。ただ確信を持って言えることであるが、現地で深刻になるような問題はきわめて個人的な事情に由来するものなので、結局は自分の力で乗り越えるしかないものだと思う。無論他者の力を借りねばならないことは多々あるはずだが、それを必要なときに求められるのもやはり自分でしかない。 私が今この場で書こうと思っているのは、自分がインターンシップで何を得たかについてだ。こういうことを書くと、さぞかし自分がインターンシップによって成長し、また帰国後の今現在、経験を生かしたすばらしい仕事をしているかのようなのだが、実のところ、私は今派遣社員でスウェーデン語や英語などとは無関係の生活を送っている。教育職でもないし、語学を使うわけでもないのでこれからキャリアアップや人生の転機を求めてインターンシップに望もうと考えている方々を落胆させてしまうかもしれない。確かにインターンシップをきっかけに大きく自分の人生を変える人がいるであろうということは事実だが、そうでない人もいるということはぜひ知っておいてほしい。というのも私の経験からして、インターンシップとは具体的に目に見える形で何か、将来に役立つものを直接手に入れられるようなものではないからだ。 では私は一体仕事やキャリアではない何をインターンシップで得たのかということであるが、もちろん第一にスウェーデン語である。スウェーデン語なんて日本でそうそう話す人はいないし、間違いなく特技といえると思う。残念ながら仕事に生きる特技ではないが、その習得が私のインターンのメインの目的であったことからして、インターン活動が今の仕事に直接は活きないというのは仕方のないことでもある。しかしながら、研修中にたどたどしいながらもスウェーデン語で人前に立って授業をこなしたというのは自分にとってのこの第2外国語に対しての自信につながっている。さらに少なくとも日本語か英語でならどこでも話せる自信がついた。研修中は自分にとって一番困難なスウェーデン語で人前で話すという行為をやってのけたのだ。これに比べたら日本語や英語でどうこうするなんて本当に他愛ないことに思える。が、そう言えるのもやはり経験あってのことだろう。考えてみるとスウェーデン語を学びにいって英語力に自信をつけて帰国、というのも変な話だが、ヨーロッパではかなりの地域で英語が通じるようなのでよくあることかもしれない。 以上、私のインターン活動にプラクティカルな意義を求めるのならそういうことになるが、実はそれも私の中ではさほど大きいことではない。なぜなら私がスウェーデンで得た本当の財産は1年間住んだ思い出と経験にこそあるからだ。いい思いばかりだからなのではなく、事実はむしろその逆で、現地では当時はさほど苦労と思わなかったことも今改めて思い返してみると恥ずかしいことや悔しいこと、辛いこと、腹の立つことばかりだったように思う。にもかかわらず自分の中にこれだけ色々なことが残っているのは、自分が望んでいった土地でした苦労だからではないかと思う。こんなことは通常ならありえないのではないだろうか。好き好んで参加費を払って只で苦労するのだから。しかしそういうことを考えるくらいなら単純に留学を選んだほうがだんとつに楽だしお得だろう。こちらには少なくとも責任はないし辞めるのは自分の自由だ。だけどインターンにはインターンでしか味わえない苦労や充実感があるし、お金を稼いだり、ただ外国暮らしを楽しむ事を目的とする行為からは得られないものがあると思う。それは苦労と一体となっていて、苦労すればするほど、得がたいものとなるような気がする。残念なことにそういうことは目に見える形では決して表せず、本当のインターンの成果は自分の中にしかない。 インターンシップにかける心意気は人それぞれで、動機だって千差万別だろう。実際、やってみたいと思うのなら動機なんて何でもいいと思う。ただ、苦労をしたくないのだったらインターンシップはやめたほうがいい。苦労することを前提に、それでも何かをしたい人向けだと思う。 1つインターン活動をする方が覚えておくべきことは、インターンシップ活動それ自体は自分のキャリアにはならないし、例えば研修校が公立の学校などであれば、活動がきっかけで現地スタッフになったり・・・ということはないだろうということである。インターンシップを通じて実際の仕事などを得ることを期待しないほうがよいように思う。それを目的にすると活動終了後に何も得られなかったと後悔することになりかねない。インターン活動を通じて何かを得ることを目的とし、自分の人生の次のステップにすること。それをよく心得ておくべきだと思う。それが例えば直接的にもっとステップアップした仕事であったり、技能の習得であったりすればそれが客観的には一番いいことなのかもしれない。が、そういうチャンスに恵まれ、それを物にできる人ばかりではない。私はその恵まれたほうではない立場にあるが、スウェーデンでの辛かった出来事まで含めたその時間そのものには何にも変えがたい価値を感じているし、それがあるから今の自分があると思っている。インターンとしての経験は私を内面的に成長させてくれた貴重な思い出である。 |